年は50代半ばだろうか。いやもっと若いかもしれない。
深く刻まれた皺。飲み屋でよく見る笑顔。人の良さそうな笑顔だ。
身振り手振りを交えて楽しそうに話している。
たまに相手の声にも耳を傾けている。
笑顔の中に真剣な眼差し。人の話をきちんと聞く人なのだろう。
うんうん、と頷いてはまた笑い出す。余程楽しいのか。
自分はその人を見ながら、なんでこんなにも冷めているのだろうか。
同じように笑う事もできない、話を振られても曖昧に笑い返すだけだ。
そういえば、どこの飲み会に行ってもこんな感じだったかもしれない。
その人は歩道橋の階段の上で胡坐をかいている。
ペットボトルの水を飲みながら、手すりに向かって話し掛けている。
僕は見向きもせずに、楽しそうなその人の前を通り過ぎた。