聞いて欲しいことはあるけれど、深くは突っ込まれたくない。
話したいことはあるけれど、全てを詳らかにするつもりもない。
誰か側に居て欲しいけれど、ベタベタして欲しくはない。
人は、誰かと一緒に居る安心感を得るために、煩わしさという名の代償を支払い、
独りでいる孤独感を受け入れる代わりに、誰にも縛られない自由を得る。


この映画に登場する5人の若者達は、
誰かと居る安心感も、独りで居る気楽さも、どちらもを手に入れている、ように見える。
しかし、実はどちらも手に入れていない。
誰かが不意に居なくなったとしても、騒ぎ立てたり行方を探したりはせず、
ある日、ふらりと出て行った気分屋の猫の帰りを待つように、
心のどこかで軽く気にかけておき、帰ってくれば「おかえり」と声をかける。
来る者を拒まず、去る者は追わない。
何かに気付いていたとしても、気付いていないフリさえしていれば
この快適な空間にずっと居続けることが出来る。
だから、面倒なことは見えないことにすればいい。