心とは何か -「物を見る」ということを巡って- 野矢茂樹

5/11 意識と実在の二元論を批判する

intro
  • 心は他者と共有できていない(自我、他我)。世界は共有している(公共)。
  • 「心とは何か」と「他者とは何か」はリンクしている。
  • 第一歩として、「知覚」…メインは「視覚」。これを知覚像とする。
  • 「在る事」と「見えている事」(見えている事は十人十色)
  • よくある人と物とフキダシの絵。
意識と実在の二元論を批判する

上記に関して、3つの視点が考えられる。
素朴実在論、意識と実在の二元論、意識の一元論。

  • 素朴実在論…(見誤ると?)
    • 正しく見えている場合は実在を見ている。
    • 見誤った場合には知覚像を見ている。
    • まぶたを押して物が二重に見えるとき、実物はふたつに増えてはいない。

  →ご都合主義…は嫌だなぁ。論理的に素直に考えると②意識と実在の二元論となっていく。

  • ②意識と実在の二元論
    • 正しい…実物と一致している。
    • 誤り…実物と一致していない。

 →実物と一致しているということを証明できない。
 →一致しているということ自体を知覚を通さねばならない。
 →なので、「懐疑論」…実物と知覚像は実は全然違うものなのでは?
 →実物と知覚像の間に、空間的、時間的な距離はない。
  →世界全てがフキダシの中に入ってしまうことになる。
  →時間という概念を加味して考えると、見ている人は死んでいて、知覚像だけ受けているかもしれない。
  →過去も未来もなく、実在と知覚像のあいだに因果関係を付けることができない。

  • カントの二元論
    • 世界…時間、空間の現象の世界
    • 知覚像の原因は物。しかし、物自体を認識することはできない。

  →物自体を考えても仕方ない。現象の世界に住んでいるのだから、現象のみを考える。

  • 現象は心ではない。
    • 現象の中に実物、見誤り、知覚、(素粒子)がある。
  • 素粒子には色も味もない。
    • 素粒子りんごは知覚した時に色を得ることができる。
    • 素粒子は世界のひとつの語り方(知覚とは別の体系)
  • 自分たちはどのように世界を認識しているのか。
  • 見ている物は実物ですか?知覚像ですか?と聞かれれば、実物ですねとなる。
  • ③意識の一元論
    • 知覚と実物は一致しているので、物自体を考える必要はない。

 →我々は実物に出会うことはない。
  →知覚された実物は知覚像。
   →我々は知覚像の中に生きている。

  • 科学にとって知覚は必要か?

  →素粒子の世界において、人間の知覚は必要ない。
  →人間とは異なる知覚システムを持つ生物だけになれば、夕焼けは赤くならない。
  →多数派の知覚の一致を元に世界は彩られる。
   →知覚の正しさが科学を支えている。

  • 素粒子論に知覚は必要ないが、素粒子論の正しさは知覚が支えている。

   →この因果関係の逆転は在り得ない。

  • Augment from Illursion 幻覚論法
    • まぶたを押した状態で見える物は実物とは違う。

  →非常に強い論法
  →これにより、二元論は無力化。
   →初めに知覚像在りき…しかし、全てが知覚像というのは実感と異なる気がする。
    →そもそも、知覚なんてしてないんじゃないか?

5/25 意識の一元論

  • 実物のある世界が実在世界。
  • 知覚像の世界は知覚世界…時間・空間がない。

 →ふたつの世界に時間・空間の関係はない。
  →因果関係を結べない。
   →実物を見ているとは言えない。
    →意識の一元論へ

  • いま、時計を見ているが、時計の実在には届いてないような気がする。

  →二元論的不安

  • 誰も見ていない場合は?→神が見ている(バークレー

  →…僕は神を信じていないのでこれはちょっとね…

  • 一元論は見誤りに強い。

 →実在物も見誤りも知覚

    • 見え方の安定性による非対称性。

 →断片化して孤立するものが見誤り。
 →遠くに蛇が居るとして、一歩近づくごとに蛇と縄が交互に見えたら区別することはできない。
  →安定していない。

  →続きものの夢の場合は?…第2の現実
  →現実も孤立し、断片になるとこれはもう狂気の世界。
   →孤立した断片において、生きていけない。

  • 二元論は対応説、一元論は整合説

 →consistent(無矛盾)
 →coherent(秩序のある)

  • 意識の中に内在する(私の中)
  • 意識の超越を許容しない。

 →意識の世界は私の意識だけ。他人に意識はない(独我論
  →哲学的ゾンビ
  →私以外の人間は意識のある振りをしているだけ。
   →え?ゾンビじゃないって?ゾンビはみんなそう言うんだよ。
   →では、独我論者が生命保険に入るのはどういうことか?
    →ゾンビ(女房)がうるさいから、黙ってもらうために入った。
   →独我論者は言語を使用、習得することができるのか?正しく行使することの意味は?

  • 知覚像なんて無いと言いたい。

 →見ているものは常に実物。
  →意識のスクリーンに写したイメージというものはない。
  →知覚で実在世界にアクセスしている。
  →公共の世界に大勢の人が同時にアクセスしている。

  • 知覚像の拒否

 →見誤りはどうなる?
 無くなる?