ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]

★★☆☆☆
うーん…?
ツンデレの落とし方みたいな映画だった。
これだけで完結してないからモゴモゴするものが多数。

  • 後見人プレイ
  • やられたらやり返す
  • たまには事件なんか起こしてみちゃったりして
  • 過去だって今と変わらず色々ありました
  • 映画の流れ的にやっといた方がいいからやります
  • 皆流されて生きてますよねー
  • あ、おれここで死ぬ役だった
  • 次回はブロンド美女

ちょろっとググッたら原作もヒロインが良い!という感じらしいので納得。

映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
まどぎわ通信 madogiwa2

原題:MAN SOM HATAR KVINNOR 公開:2009年スウェーデンデンマーク,ドイツ 時間:153分 分野:サスペンス
原作:小説/スティーグ・ラーソン「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上」
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
出演:ミカエル・ニクヴィストノオミ・ラパス
   スヴェン=ベルティル・タウベ,イングヴァル・ヒルドヴァル
   ビヨルン・グラナート,ペーター・ハーバー
   マーリカ・ラーゲルクランツ,グンネル・リンドブロム
   エヴァ・フレーリング,ゲスタ・ブレデフォルト
   ペーター・アンデション 脚本:ニコライ・アーセル,ラスマス・ヘイスターバング
撮影:エリック・クレス,イェンス・フィッシェル
音楽:ヤコブ・グロート 評価:


「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」あらすじ:

「ミレニアム」発行責任者ミカエル・ブルムクヴィスト(ミカエル・ニクヴィスト)は,実業家ハンス=エリック・ヴェンネルストレム(ステファン・サウク)との裁判で敗訴.共同経営者エリカ・ベルジェ(レナ・エンドレ)は彼を慰める.そんな彼にディルク・フルーデ(イングヴァル・ヒルドヴァル)弁護士を通じ,実業界の元重鎮ヘンリック・ヴァンゲル(スヴェン=ベルティル・タウベ)が接触.40年前に失踪した姪ハリエット(エヴァ・フレーリング)の調査を依頼.グスタフ・モレル(ビヨルン・グラナート)警部補も捜査に協力.ヘンリックには兄ハラルド(ゲスタ・ブレデフォルト)とリカルドがおり,弟ゴッドフリードと妻イザベラ(グンネル・リンドブロム)の間に現会長マルティン(ペーター・ハーバー)とハリエットがいた.一方,調査員リスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)の後継人がニルス・ビュルマン(ペーター・アンデション)弁護士に変わる.

■ 原作者のスティーグ・ラーソン心筋梗塞で急死.その後2008年度世界書籍売り上げ第2位を記録したベストセラーを実写化.日本でも話題になったらしい.原作は未読のため宣伝などからミステリーなのかと思って見始めたが,敢えて言えばサスペンス映画というイメージで終わった.少なくとも映画を見ている限り,トリックを論理的に解いていく過程に爽快感がある推理ものという印象は受けない.映像としてはショッキングさを狙ったのか,屍体がしっかり描かれ,SM描写もあるR-15になっている.153 分もかけて未消化な印象で終わるのが残念.ミカエルとリスベットの二人が共同捜査にあたるまで時間をかけた割に説明不足な一方,共同捜査を開始してからは展開が早い.唯一の収穫はリスベット役のノオミ・ラパスの奮闘だろう.不良たちと遭遇して暴れる場面では迫力不足だが,その反抗的な視線は悪くない.ただミカエル役は少し地味すぎる.以下ネタバレあり.

■ もう少し陰惨な話になるのかと想像していたので,登場人物の背景描写がそれほど詰めて描かれなかったのが残念だ.リスベットについては,同性愛の傾向があり,極度の男性不信があることからその過去はある程度想像つくようになっている.後半では男を焼死させた場面が描かれ,更に母との会話でその男が父または義父だったと思わせる.ただハリエットの近親による性的虐待の過去と重ねあわせてしまうと結構ステレオタイプな話になってしまう気がする.一方で,そこまでトラウマのあったリスベットがミカエルに惹かれる理由が映画からまったく感じ取れない.彼女が殺したのが義父で,父性に憧れてミカエルに惹かれたという話にすると,これまたステレオタイプな展開で終わってしまう.エンディングクレジットの後に続編が映し出されるように,原作にも続編があるため,どうしても心理描写が中途半端で終わってしまう点が愛読者でもない限り受け入れにくい.

■ 逆に口では躊躇しながらも,据え膳のようにあっさりリスベットを受け入れるミカエルもどうなのかと思ってしまう.予告編を見ている段階では悪徳記者かと思っていたが,映画ではあまり後ろ暗いところもないただの善人キャラクターになりすぎた.離婚歴,そしてエリカとの関係が暗示されるものの,女性関係にルーズな感じは出さないとあの場面が納得いかない.ヴェンネルストレムとミカエルの因縁もほとんど説明がない.更にサディストであるビュルマン弁護士のシークエンスが本作だけ見てしまうと蛇足にしか思えない点も今ひとつだろう.どの人物描写も本作だけで完結しない点がもどかしさをかき立てる.肝心のハリエット事件は,電話番号が聖書からの引用だったという唯一のトリックをリスベットがあっさり解いてしまう.しかもかなり早い段階だ.あとはデジタル化された画像解析の凄さだけで物語を引っ張っているようにしか見えず,事件解決の爽快感がない.

■ 後半は怒濤の事件解決編となるが,あまりにも展開が早すぎる.このため説明調の台詞が飛び交うことになり,火曜サスペンス劇場を思い出してしまった.オーストラリアに至っては説明的なカットしかない.そして最終的に事件が解決した段階で疑問に感じたのは,ハリエットが失踪する直前にゴットフリードが水死していることが何故問題にならなかったかという点.普通は父親が水死した直後に娘が失踪していれば問題になるだろう.蛇足だが映画では富裕層のアイコンとしてレンジローバーが使われることが多く,本作ではランドローバー・ディスカバリーが登場する.一方,中産階級である主人公ミカエルがレンタルした車が起亜のソレントだという点が興味深い.かつて映画内でこの地位にいたのはホンダやトヨタなどの日本車勢だっただけに少し興味深かった.今やサーブやボルボスウェーデン車でなくなったことも含め,映画の背景に時代をつらつら感じてしまった.